第12回:
ヒトは水でできている ― 水分補給を忘れずに ―(2005/6/19)
「運動中には水を飲むな」と教えられ、ひたすら水を我慢し、運動後にグランドにある水道の蛇口に猛ダッシュした少年時代をなつかしく思い出します。もちろん今は、こんなことを教える指導者はいません。
カラダの大部分は水でできています。新生児は体重の約75〜80%、幼児は約70%、成人男子で約60%、成人女性は約55%、高齢者で52〜55%、肥満者は50%程度が水分です。脂肪よりも筋肉の方が、はるかに水分量が多いので肥満者や女性は水分量が少ない傾向があります。
昔はなぜ「水を飲むな」といったのか? 「運動中は水を飲むな」の原点は江戸時代に書かれた貝原益軒の「養生訓」とみられています。生理的欲望を抑えることが美徳とされた時代背景によるものでしょう。また、大正初期に出版された日本初の運動生理学の教科書にも、運動中の飲水禁止が書かれています。上水道が整備されていなかった時代で、不衛生な生水を飲むことが危険であったことなども影響しているかもしれません。「発汗量が増えることでエネルギー消費が増え、疲労が増大する」など現在の健康科学からみると根拠のない理由で運動中の飲水禁止が説明されていました。 運動後の体重減少は要注意
25年ほど前までは、運動中の飲水禁止は常識になっていましたが、1978年、気温35度、湿度80%という厳しい気象条件の中開催された福島市民マラソンで、50人が日射病で倒れ、3名が死亡するという事故をキッカケに日射病予防としての飲水が注目されるようになりました。
条件にもよりますが、マラソンを完走すると4〜5kg体重が減るともいわれています。 減少分の大半は発汗によるもので、60kgの選手であれば体重の7〜8%の水分が失われることになります。体重の2〜3%の水分が失われると運動能力や体温調整能力が低下するので、運動後の体重減少が2%を超えないように水分補給する必要があります。6%を超えると頭痛や熱性困憊が起こり、20%の水分が失われると生命が危険にさらされます。運動後の体重減少はほとんどが体水分量の減少分です。くれぐれも「やせた!」などと勘違いしないでください。基本的には運動後に体重が減らないくらいに、こまめに水分補給をすることが大切です。 水分補給のポイント
私たちは1日安静にしていても約2.5〜3Lの水が必要です。運動中を含めて以下の点に注意して水分補給しましょう。 1.運動開始20−30分前に水分を補給し、運動中には15〜20分毎にコップ1杯(200ml)
程度の水を飲む。運動後のガブ飲みは吸収に時間がかかり、食欲不振の原因にもなるので要注意。 2.喉の渇きを感じた時には既に脱水状態になっているので、この時点での飲水では遅い。喉が渇く前に水分を補給する。
3.10℃前後の飲料水が吸収も早く効果的。冷た過ぎる水は胃腸に負担をかけるので避ける。涼しいときは常温でもOK。 4.運動前後の体重差が、発汗で失われた水分量。運動前の体内水分量を保つ。
5.1時間程度の運動では、水だけで十分。長時間運動する場合は、糖分とミネラルを含んだ飲み物の方が良い。糖度は3〜5%が良いので市販のスポーツドリンクの場合は薄めて飲むなどの工夫が必要。
6.日常生活では、寝る前、起床後、入浴前後が水分補給の良いタイミング。尿の色や回数などを目安に。寝る前の水分摂取は心筋梗塞、脳梗塞の予防につながる。 運動後にお酒で水分補給しよう考える方もいますが、お酒やコーヒーなどは、利尿作用があり、脱水傾向となります。「ゴルフの後はビールで乾杯」という光景を目にしますが、特にお酒を飲む時はいつも以上に水分を多めにとるように心がけてください。 参考文献:中原英臣著「スポーツ障害を防ぐ」講談社 |